8)職場のトラブルや紛争の解決方法
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@ 労働委員会の解決方法
Q
いま、私は会社からうけた解雇について、その不当性を追及するために、 個人で加入できる地域の労働組合に入って、組合から会社と交渉をしていますが、
会社の主張と組合の主張が平行線をたどっていて、解決の方向が見いだせない状態になっています。
そこで、組合は労働委員会に申し立てて、解決をはかろうとしているのですが、
労働委員会にはどういう解決方法があるのでしょうか。
A
労働委員会は、労使関係の中でも主として、集団的労使関係を対象とした労使紛争の解決を援助するための、独立した行政機関です。
労働委員会の解決方法には、斡旋(あっせん)、調停、仲裁の三つの方法があります。
斡旋とは、労働委員会が労使双方の主張を整理して、 確かめ、対立点を明らかにしながら、労使間の話し合いをとりもち、 または主張をとりなして、争いが解決するように努める方法です。
具体的には、会社が斡旋に応じるかどうかの意向打診をまずおこない、 そのうえで労使双方から事情を聞き、それぞれの意見を整理してつたえ、
交渉を仲介し、労働委員会からの意見を示しながら、 斡旋案を提示し、双方のあゆみよりを促して、解決させていく方法です。
調停は、労使の一方または双方からの申請にもとづいて、 労使双方や参考人の意見を聴き取ったうえで調停案を作成し、
双方にその受託を勧めることによって、争いを解決させる方法です。
調停は、斡旋と比較して厳格な手続が取られるために、実際に調停の手続がとられる事例は多くありません。
仲裁は、労使双方が争いの解決を労働委員会に任せ、 双方がその裁定に従うことによって、解決させる方法です。
仲裁の内容は、労使双方に強制的に押しつけられる制度ですから、 実際には利用する例は斡旋や調停に比べてきわめて少ないのが実情です。
以上の解決方法は「労働関係調整法」の規定にさだめられたものですが、 労働者個人では利用できません。
労働者個人の問題を労働委員会に解決を委ねるためには、 どこかの労働組合に加入して、労働組合から労働委員会に申し立てる必要があります。
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A 民事訴訟
Q
職場のトラブルを裁判所に訴訟などを起こして解決したいと思っていますが、
どのような手続が必要なのでしょうか。
A
職場でいきなり解雇といわれた、働いた賃金が払ってもらえないなど、 民事訴訟で争って解決したい場合、いくつかの方法があります。
賃金など求める金額によって取り扱う裁判所が異なり、140万円を超える場合は地方裁判所、60万円超えない場合は簡易裁判所となります。
いずれの場合も訴えは原則として、相手方会社住所地の裁判所で起こします。
訴えを起こす場合、訴状(裁判所窓口に定型訴状用紙があります)、 手数料(収入印紙)、
郵便切手のほか、資格を証明する書類などが必要となります。
簡易裁判所の手続の流れは次のようになります。
訴状提出⇒相手会社側からの答弁書⇒言い分の補充・証拠書類・証人の準備⇒第1回期日の指定⇒
(期日における審理) 主張⇒双方の主張整理⇒判決、 または話し合いによる解決(和解)、
審理は原則1回で終了。
相手側会社が判決や和解で決まったことに従わない場合は、
強制執行の手続きをとって判決や和解の内容を実現することができます。
地方裁判所で争う場合、会社の商業登記簿謄本または登記事項証明書、
雇用関係の詳細が明らかになるもの、
雇用契約書、就業規則、賃金明細書および解雇の場合には解雇通知書などが必要となります。
手続の流れは簡易裁判所の場合と原則として変わりませんが、
裁判の場合、判決が出るまでの時間が長いことを想定して、
その間の生活を維持するために、仮の措置として賃金の支払いを求める仮処分決定の手続を取ることができます。
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B 労働審判とは
Q
裁判制度のなかに労働審判という裁判があると聞きましたが、それはどんな裁判でしょうか。
また、労働審判を申し立てる場合、どんなことに気をつけなければならないでしょうか。
A
労働審判制度は、労働者個人と使用者とのあいだの紛争を速やかに解決することを目的とした裁判制度です。
各地方裁判所の本庁に、労働審判官(裁判官)1人と、労働者側、使用者側が推薦する各1人の労働審判員の3人で構成された労働審判委員会が置かれています。
労働者(または使用者)の申し立てで審理がはじまり、審理は3回以内(3,4ヶ月)でおわり、紛争解決案を決定します。 この決定を労働審判といいます。
労働審判にたいして2週間以内に労使のどちらかから異議が出されなかったときは確定しておわります。
また、審理のあいだに(労働審判が出されるまでに)話し合いで解決をめざす調停手続がおこなわれることもあり、そこで双方が合意に至ったときは調停を成立させ、合意内容を裁判所で調停調書に作成しておわります。
審判や調停は、裁判での判決や和解と同じ効力を持ち、強制執行もできます。
労働審判にたいして異議が出されたときは、通常の裁判に移行し、通常裁判のすすめ方で、はじめからやり直すことになります。
紛争内容が複雑な場合や争点が多い場合など、3回の審理で終了するのが困難な紛争で、裁判で行うほうが妥当と労働審判委員会が判断した場合は、審判をせず、通常の裁判に移行させることもあります。
この場合も、はじめから裁判をすることになります。
また、労使の一方が欠席しても審判手続はすすめられる点は通常の裁判と同じです。
労働審判制度の最大の特徴は、3回の審理でおわることです。
逆にいえば、自分の主張する内容と立証を3回でし尽くさなければならない、ということになります。労働審判を申し立てる場合、その点を考慮にいれて臨まなければなりません。
つぎに大事なことは、相手方となる会社が労働審判制度を理解し、審理に応じ、その結論にしたがうことが前提となります。
会社に紛争を解決するまじめな意思がなく、自分の主張に固執して審理に応じようとしないときは、どんな結論が出ようとも異議が出されることになりますから、(その場合は通常裁判に移行しますから)労働審判を申し立てる意味がありません。
その場合は、はじめから通常の裁判を申し立てるほうが、余分な時間と手間をかけずにすむことになります。
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