大阪労連(全大阪労働組合総連合)ウェブサイトは 2013年12月24日にリニューアルしました。
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おおさか労働相談センター 困ったときの対策集
2)賃金、時間外手当、退職金など

@ 残業手当が払われない


 私の会社では恒常的に残業がありますが、残業手当は支払われません。どうしたら いいのでしょうか。

 まず、請求することです。
そのためには、自分が残業した日のタイムカードのコピ ーか作業日誌に何時間の残業をしたか、または手帳につけるなどして、月の合計残業時 間数に対する残業手当を支払ってほしい旨会社にいうことです。
それで支払われなかっ たら、近くの労働組合(会社が大阪にある場合はおおさか労働相談センター)に相談す るか、会社の所在地を管轄する労働基準監督署に申し出て残業手当を支払うよう会社を 指導してもらうことです。
労働基準法では、事業主は労働者を1日8時間以上、週40 時間以上働かせてはならないことになっています【労働基準法32条】。
もし事業主が その時間をこえて労働者を働かせたい場合は、労働基準法36条に基づいて労働者の過 半数を組織する労働組合か労働組合がない場合は過半数の労働者を代表する者と協定 を結んで、労働基準監督署に届けなければなりません。
そして協定を結んだ上で、労働者が1日8時間、週40時間をこえて働いた場合は、 残業代として2割5分増の賃金を支払い、残業が午後10時から翌朝5時までの場合は、深夜労働割増(2割5分増)が加算されて5割増となります。

2008年12月の国会で、労働基準法の一部が改正されました。(2010年4月施行)それによりますと、1ヶ月に45時間を超えて時間外労働を行うばあいには、あらかじめ労使で特別条項付きの時間外労働協定を締結する必要がありますが、新たに
  1. 特別条項付きの時間外労働協定では、月45時間を超える時間外労働に対する割増賃金率も定めること。
  2. @の率は法定割増賃金率(25%)を超える率とするように努めること。
  3. 月45時間を超える時間外労働をできる限り短くするよう努めること。が必要となりました。また、1ヶ月60時間を超える時間外労働については、法定割増賃金率が、現行の25%から50%に引き上げられます。但し、中小企業については、当分の間、法定割増賃金率の引き上げは猶予されます。
    (猶予される中小企業)
    1. 資本金の額または出資の総額が
      小売業………5000万円以下
      サービス業…5000万円以下
      卸売り業……1億円以下
      上記以外……3億円以下

      または
    2. 常時使用する労働数者が
      小売業…………50人以下
      サービス業…100人以下
      卸売り業……100人以下
      上記以外……300人以下
      (注)事業場単位ではなく、企業(法人又は個人事業主)単位で判断します。

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A 一方的賃下げは許されるか



 会社から経営悪化を理由にして「賃金を下げる」と、有無を言わせないかたちで言ってきました。
職場には労働組合がないのですが、どうしたらいいのでしょう。


 賃金をはじめ労働条件については「労働者と使用者が対等の立場において」(労働 基準法2条)決められるのが基本になっており、会社側が一方的に宣言したり、押しつ けたりして決められるべきものではありません。
 従って、会社が労働者になんの意見も 聞かず、あるいは無視して、勝手に賃下げをしようとしても違法であり、無効となるも のです。法的には、労働条件の不利益変更はその変更に合理性がある場合だけ、有効性 があるとされています。
(最高裁判例H12・9・7:みちのく銀行事件参照)
 とくに、賃金のように重要な労働条件の不利益変更は、高度の必要性に基づいた合理性がある場合に限り、労働者に拘束力をもつことになります。「合理性がある場合」とは、
 @労働条件変更の必要性
 A労働者に対する不利益の程度・代償措置の有無
 B社会的妥当性
 C労働者に対する説明・説得
 の4点が重要な要素となっています。
いずれにしても一方的な賃下げは、上記の@〜Cをクリアしていないと無効となります。
従って、同意していないのに違法にも会社が賃下げを強行してきたら、労働相談センターへ相談してください。大事なことは、同意を迫られても即答しないことと、職場でよく相談して納得できない場合はみんなで同じ行動をとることです。なお、以上のことはアルバイトやパート労働者などの場合も同様です。
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B 仕事上のミスへの罰金は違法


 私は運送会社で運転の仕事をしていますが、先日積んでいた荷物が片寄り荷台から落ちて、破損してしまいました。
その損害額はどれくらいかわかりませんが、次の給料で罰金として差し引かれました。
荷台にはたぶん保険がかかっていると思うのですが…。
罰金というのは納得いきません。法的にはどうなのですか?


 仕事上、本人の故意または重大な過失(本人の判断による過積載など)でない場合、従業員が支払う必要はありません。
その罰則規定は就業規則に定められていなければなりませんが、罰則・制裁に関して労基法は「労働者に対して減給の制裁を定める場合は、1回の額が平均賃金の1日分の半額を超え、総額が一賃金支払期における賃金総額の10分の1を超えてはならない」(同法91条)としています。
これは1回の制裁額が1日分の半額を超えてはならないこと、そして、一賃金支払期に発生した数事案に対して、減給の総額が賃金総額の10分の1以内でなければならないという意味です。
あなたの場合、ミスをしたのは1回だけであり、たとえ、就業規則に罰則規定があったとしても、その額は1日の平均賃金の半額を超えてはならないわけで、10万円というのは当然その額を超えているものと思われ、法違反です。
会社に言って是正させてください。 
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C 出勤しない日の通勤手当は?


 私の会社では通勤手当は毎月1ヶ月分の定期代で支給されています。
 会社は最近になって通勤手当について「休日や休暇を取った日は通勤費がかからないのだから、出勤しない日の分は返してもらいたい」と言いだしています。
具体的には(通勤に要する往復の交通費)×(出勤しなかった日の日数)を次の月の通勤手当から差し引くというのです。
こんなことは許されるのでしょうか。私の会社には労働組合がないのですが。


 通勤費は法的にいえば必ず支給しなければならないものでなく、そのため労使でその支給基準を自由に定めることができるものです。
従って、仮に出勤した日のみ通勤費を支給する旨の賃金規定(または就業規則)があったとすれば、それはそれで有効となります。しかし、あなたの会社の賃金規定が「通勤費は1ヶ月の定期代を支給する」とだけ規定しているのであれば、通勤費からいかなるものも差し引くことはできません。
また、規定を変えるとすれば「出勤しない日の分は支給しない」などといった但し書きを付け加えることになりますが、その場合でも定期代で支給されるものから切符代で差し引くのは矛盾しています。
しかし、大切なことはこれは明らかに労働条件の不利益変更ですから、会社が労働者の意見を無視して一方的に変更することはできないということです。従って、職場でよく相談してみんなで同意しないことを意思統一して、その意思を会社に伝えることが必要です。
 それでもなお、会社が強行するようなら、近くの労働組合に加入して要求を会社に提出し、団体交渉などの諸行動で解決する方法もあります。
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D 倒産寸前の未払い賃金


 小さな工場(従業員10人)に勤めていますが、最近の不景気のため、仕事がなく、賃金も支払われておりません。
このままでは倒産するしかないのですが、私の未払賃金や退職金はどうなるのでしょうか。
会社には借金ばかりで、これといった財産もありませんし、現金や預金もないに等しい状態です。


 賃金確保法という法律のなかに、国による未払い賃金の立替払いの制度があります。
その請求の仕方を簡単に説明します。
会社が倒産した場合だけでなく、事業活動が停止していて、再開する見込みもなく、現在、賃金の支払能力もないと言う状態になっている場合、労働基準監督署に申請しますと事実上の倒産として認定してくれます(申請用紙は労基署にあります)。
つぎにあなたは労基署が会社の「倒産」を認定したことを確認のうえ、会社を退職します。
そのうえで、労基署からもらった確認通知書の用紙の左側に未払い賃金の額を記入する欄がありますので必要事項を記入し、労働福祉事業団へ請求します。詳しくは労基署で訊いてください。
なおあなたの会社に退職金を支給する定めがある場合や定めがなくても支給実績がある場合は「退職所得の受給に関する申告書・退職所得申告書」という用紙がありますので、それに本来なら支給されるはずの退職金の額を書き入れ、あわせて請求します。立替払いされる額は未払い賃金総額(退職金を含む)の80%です。
あなたの場合は上限296万円となります(請求者が45歳以上で、未払い賃金額が370万円以上の場合)。
早めに会社の所轄の労基署へ行って手続きをとってください(手続きができるのは退職後6ヶ月以内に限られています)。(注)立替払いされる額の上限は30歳以上45歳未満の場合は176万円、30歳未満の場合は88万円です(年齢は退職時現在)。
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E 賃金の完全歩合制について


 私の会社は来年から営業課員にかぎって賃金(月給制)を完全歩合制へ移行させることを提案してきました。
労働者の立場から、どういう点に注意すべきでしょうか。


 タクシー労働者などに適用されているものですが、まず第一は、営業成績がゼロの月もあるということを想定しておかなければなりません。
成績があがってなくても、労働者が1ヶ月働いておれば、最小限でも最低賃金法に定められている最低額以上の賃金が保障されていなくてはなりません。
そして一般的な目安としては、「使用者側の理由による休業手当が、その労働者の平均賃金の6割以上支払われなければならない」(労基法26条)ということから、最低保障は少なくとも平均賃金の6割以上でなければなりません。
また、労働基準法は「出来高払制、その他請負制で使用する労働者については、使用者は、労働時間に応じ一定額の賃金を保障しなければならない」(同法27条)と定めています。
ここでいう「請負制」というのは労働の結果や成果によって賃金が決められるもので、歩合制などもこれに該当します。
従って、使用者は各労働者にたいし、それぞれの働いた時間に応じ、一定額の賃金を、たとえその成果がゼロであっても支払わなくてはなりません。
最低保障額は1時間につき何円という時間給を原則とします。 あなたの場合、職場の仲間とよく話し合い、最低保障額をできるだけ多く設けるように会社に要求することをおすすめします。最低保障額が低く歩合給部分が大きければ毎月の生活が安定せず、安心して働くことにも影響することを会社に訴えることも必要です。
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F 年俸制賃金での残業代


 このたび、私の会社では賃金が年俸制に移行し、賃金額が年単位で決定されることになりました。
 それによると、賃金額は残業代も含めて計算されてあるとのことですが、なにか問題点があるように思うのですが、どうでしょうか。


 まず、基本的な労働条件である賃金支払いの変更ですから、個別労働者の同意が必要です。
また、たとえ年俸制であっても残業代は支払われなければなりません。
そして、就業規則や賃金規定に年俸が残業手当を含めて決められる旨の定めを設けてあることが必要です。
次にあなたに年俸額に何円の残業手当が含まれているかが明確になっていなければなりません。
この二点が明示されていない場合は、年俸額とは別に残業手当を請求することができます。
また、労働契約上(就業規則上)年俸額に含まれている残業手当が明確になっている場合でも、残業手当に相当する残業時間を超えて残業した月は、超えた時間数分の残業手当を年俸額とは別に請求することができます。
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G 退職直後にボーナス支給


 私は最近、会社を退職しましたが、私が退職した直後にボーナスが支給されました。支給日が決まっていましたので、退職日に支払ってくれるように言いましたが、支給されませんでした。
 私は随分会社に貢献してきましたし、今回のボーナスの対象期間にも在職していました。こんなことは許されるのでしょうか。


 就業規則でボーナス(一時金)の支給条件(一回の支給率や額、支払日など)を定めている場合は、ボーナスは労働基準法(11条)上の賃金となります。
また、ボーナスの支給額は、一定の対象期間を定めて、この間の会社の業績などを勘案して算定する場合が多いようです。
その場合、対象期間と支給日との間には半月から一ヶ月程度の期間がおかれているのが普通です。
このようにボーナスの対象期間と支給日との間にズレがあり、また対象期間が長期間であることから、その期間(の全部または一部)を勤務しているにもかかわらず、一円も支払われないというのはボーナス制度の趣旨に反することになります。
一般的には、就業規則でボーナスの支給基準が定められ、対象期間中の支給額を具体的に確定することができる場合には、支給日前の退職であっても対象期間内の労働に対する報酬として支給基準どおりのボーナスを受給できるのが通常です。
しかし、就業規則で「一時金は支給日に在職している者に支給する」などという、いわゆる支給日在籍条項を定めている場合があります。
判例では、このような就業規則を「合理的」とみなしているのが通例です。
支給日在籍条項がない場合は、今までの支給例を調べて自分に有利な例があればそれを慣行とみなして、慣行どおりの支給を会社に要求してください。
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H 有給休暇をとると皆勤手当がカットされる


うちの会社には就業規則(賃金規定)に皆勤手当として5000円支給するとなっていますが、有給休暇をとると支給されません。有給休暇をとることによって賃金を減額されるのは違法だと思うのですが、こんな場合はどうなのですか。


 これでは有給休暇をとりにくくなりますね。
年次有給休暇は労働者が人たるに値する生活を営むことが出来るようにするために、その最低労働条件を定めたものであって(労基法39条)、「労働者に賃金を得させながら、一定期間就労から解放することによって、継続的な労働力の提供から生ずる精神的、肉体的消耗を回復させ、社会的文化的生活を営むための金銭的時間的余裕を保障する(仙台高裁S41・5・18)」ものであるとしています。
 従って、有給休暇の取得は出勤として取り扱うこと、その取得によって賃金の減額その他の不利益な取り扱いをしないこと(同法付則134条)を定めています。
この「賃金の減額その他」には、皆勤・精勤手当、ボーナスの算定に際して、有給休暇を取った日を欠勤、または欠勤に準じて取り扱うこと、有給休暇の取得を抑制するようなすべての不利益な取り扱いを含んでいます。
 もし、就業規則にこのような規定がある場合には直ちに改正させなければなりません。
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I 残業手当の計算方法


 時間外労働をした場合の残業手当はどのように計算されるのでしょうか。


 1時間当たりの賃金を基礎に計算します。
1時間当たりの賃金は
(1)あなたの賃金が時間給の場合は時給額そのものが1時間当たりの賃金になります。
(2)賃金が日給の場合は「日給額÷1日の労働時間数」が1時間当たりの賃金になりますが、日によって労働時間が違う場合は「日給額÷1週間における1日平均労働時間数」で算出します。
(3)賃金が月給の場合は「月給額÷1ヶ月の労働時間数」が1時間当たりの賃金になりますが、月によって労働時間が違う場合は「月給額÷1年間における1ヶ月平均労働時間数」で算出します。
上記の計算で、時給額・日給額・月給額には家族手当、通勤手当、別居手当、子女教育手当、臨時の賃金(結婚手当、退職金など)、1ヶ月をこえる期間毎に支払われる賃金(ボーナスなど)などは含まれません。
 また、労働時間数とは労働契約で定められている所定労働時間数のことで、実労働時間数ではありません。
さらに、平均労働時間数の端数は切り上げることはできません。以上の方法で1時間当たりの賃金を確定させます。その上で、時間外労働に対する賃金(残業手当)を計算します。
 その式は「1時間当たりの賃金×1.25×残業時間数」となります。残業が休日労働の場合は上の式の1.25が1.35になり、時間外労働と深夜労働(午後10時から翌日午前5時までの間の労働)が重なる場合は、上の式の1.25が1.5になり、休日労働と深夜労働が重なる場合は、上の式の1.25が1.6になります。
 なお、時間外労働というのは労働基準法で定められている1日の労働時間の上限(8時間)をこえて働くことで、例えば7時間労働の人が1時間の残業をした場合、その1時間に対する賃金は1時間当たりの賃金が支払われるだけで、法律の上では1.25倍の賃金を請求する権利はありません。
ただし、企業によっては労働組合との協定や就業規則によって、所定労働時間が8時間未満であっても、所定労働時間をこえれば、残業手当を支給しているところもあります。
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J 住宅手当は残業手当の算定基礎になるか


 私の会社では、正社員に限り住宅手当が支給されています。3)―Iに残業手当の計算の基礎となる賃金が説明されていますが、住宅手当も含まれるかどうかが明確ではありません。
住宅手当は残業手当の算定基礎となる賃金に算入されるでしょうか。


 住宅手当には、算入されるものとされないものがあります。
住宅手当の行政解釈は「住宅に要する費用に応じて算定される手当をいうものであり、手当の名称の如何を問わず実質によって取り扱うこと」(H11・3・31基発第170号)となっており、ここでいう「住宅に要する費用に応じて算定される」とは、家賃など住宅に要する費用に一定率を掛けた額とすることや、費用を段階的に区分し費用が増えるにしたがって額を増やすことなどをいいます。
 そういう個人によって、金額が異なる支給の仕方をしている住宅手当は算入されません。
算入される住宅手当は、例えば全員一律に同額が支給されるケース、役職や職種・雇用形態によって金額に差はあるけれどもそれぞれに一律に同額の支給がないというケース、賃貸住宅や持ち家など住宅の形態ごとに定額の支給があるというケース、所帯主であることや扶養家族があることなど一定の要件を具備すれば一定額が支給されるケースなど住宅条件や住宅に要する費用に関係なく一定額を支給される住宅手当はすべて残業手当の算定基礎となる賃金に含めて計算されます。
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K 講習費用が給料から差引かれているが


 私は今年の9月に美容院に勤めはじめましたが、新入社員としての講習を9月に受けました。
この講習会の費用は5万円ということでしたが、9月の給料でこの5万円が差し引かれていました。
当然、無料と思っていたので、事業主に言いましたが、聞き入れてくれません。こんなことは許されるのでしょうか。


 まず、新入社員としての業務に必要な講習や研修を受けるのは当然であり、その費用を事業主が負担するのもまた当然です。
判例でも、美容室が就職後7ヶ月あまりで退職した労働者に講習手数料30万円及び約定遅延金の支給を請求した事例で、この請求について「本件契約における従業員に対する指導の実態は、いわゆる一般の新入社員教育であり、その負担は使用者が当然負担すべき性質のもの」(浦和地裁S61・5・30)としています。
 さらに、賃金からの控除ですが、賃金に関しては前借金相殺の禁止(労基法17条)。強制貯金の禁止(労基法18条)などがあり、同法24条では、労働の対価である賃金が完全かつ確実に労働者の手にわたるように、賃金の支払いについて、「通貨払い」「直接払い」 「全額払い」「毎月払い」「一定期日払い」の5原則を定めています。
たとえ支払いの義務があったとしても、労働組合または労働者の過半数を代表する者との書面による協定が必要となります。そして本人の同意が必要です。

L 退職したら損害賠償として募集費用を請求されました


 入社してまもなく事情があって退職しなければならなくなりました。
会社は折角募集広告を出して採用したのだから、募集に要した費用を損害賠償せよと言ってきましたが、支払わなければならないのでしょうか。


 支払う必要は全くありません。
社員を募集することは会社として企業経営する上での必要不可欠な企業活動です。
従ってそれに要する費用は経費として計上していて当然です。  それをすぐ退職されたからといって社員に請求するのは企業として社会的な立場から言っても通用しません。
たとえ支払いの義務があったとしても、労働組合または労働者の過半数を代表する者との書面による協定が必要となります。
そして本人の同意が必要です。

M 上司(管理職)の指示のない残業、残業代が支払われなかった


 どうしても明日までにしなければならない仕事があったので、自分の責任上から仕事を続けていたら時間外に食い込んでしまいました。上司の指示を受けずにした残業だとして会社は残業代を支払ってくれません。これはやむをえないのでしょうか。


 毎日している仕事の状態は管理職なら当然理解しているはずです。
あなたが明日までにしなければならない仕事の内容も分かっているはずです。
仕事が時間外に食い込む時は上司の指示を仰ぐべきだったことは否めませんが、この場合は「黙示の了解」として会社は残業代を支払う必要があります。
 ただ一言付け加えますと、「労働時間管理」は会社の義務としてしなければならないという厚生労働省の通達(2001年4月6日)があります。
ところが始業・終業など労働時間をタイムカードやICカードなどの客観的な記録を基礎として確認しない会社があります。きっちりした時間管理をさせる上で言えば、時間外作業にかかる場合は、上司の指示を仰ぐことが必要でしょう。

N 55歳で給料が大幅ダウン、引きかえに定年を延長


 もうすぐ55歳になりますが、会社はその時点で給料を大幅に下げる代わりに定年を65歳まで延長すると言っています。
55歳で給料が大幅ダウンされては生活が大変です。
やむをえないのでしょうか。

 高年齢者雇用安定法が改正され、2006年4月1日から事業主は、65歳までの安定した雇用を確保するため、
 @定年の引き上げ 
 A継続雇用制度の導入
 B定年の定めの廃止。
のいずれかの措置(高年齢者雇用確保措置)を講じなければなりません。
(さらに詳しくは厚生労働省のホームページをご参照下さい)
以上のことから65歳までの延長は事業主の義務となりました。   問題は、55歳の時点で給料が大幅にダウンするということですね。
 厚生労働省が出している「雇用条件」については、「高年齢者の安定した雇用の確保が図られたものであれば、必ずしも労働者の希望に合致した職種・労働条件による雇用を求めるものではありません」という事業主にとっては都合のよい解釈もしています。
 具体的には、55歳の時点で、
  @従前と同等の労働条件で60歳定年で退職。
  A55歳以降の労働条件を変更した上で(賃金のダウンなど)、65歳まで継続して働き続ける。
  以上のどちらかを労働者本人の自由意思により選択するという制度を事業主が導入 した場合、継続雇用制度を導入していると解釈されます。
 ここで問題は給料ダウンを含む労働条件の変更です。厚生労働省は、労働条件の変更 については労働者の過半数で組織する労働組合(そのような労働組合がない場合は、労働者の過半数を代表する者)との協議による労使協定に委ねています。
しかし、実情は 労働組合のない未組織労働者が多いことから、就業規則等において基準を定めることが できるとされています。 しかし、事業主側が労働者側に一方的に提案内容を通知しただけといったケースなど は、「労使協定をするために努力をしたにもかかわらず協議が調わないとき」として就業規則で定めることができる。
ということには該当せず、そのような場合は、改正高年齢者雇用安定法違反となります。
法律上ではこのように回りくどい解釈ですが、55歳からの賃金などの労働条件につ いては事業主が一方的に決めることはできないということです。
事業主側と労働者側とでよく協議して、生活がたちまち苦しくなるような大幅な賃金ダウンをさせないように話し合うことが必要です。

O 退職後もできる未払い時間外手当の請求


 会社を辞めたんですが、勤めていた会社では残業代が支払われていませんでした。
友人に聞いたんですが、退職してからでも未払いの残業代の請求をできるそうですが、どのように請求すればいいのか詳しく教えて下さい。

 残業代の未払いは労働基準法違反です(同法24条)。
退職後も当然請求することができます。
残業したことを証明できるもの(タイムカード、ICカードによる出勤・退勤時間の記録があれば最もいいのですが、無い場合は業務日誌による記録など)によって残業した年月日と残業時間を明らかにして各月毎の残業代を計算して資料として提出できるよう準備します。
 その資料を添えて会社の所在地を管轄する労働基準監督署に行き、会社に対して支払うよう指導してもらう。
但し、法律的には労働者が請求できる権利の時効は請求時からさかのぼって2年ですから、退職した人なら早く手続きする必要があります。
 労働基準監督署からの指導・勧告によっても会社が支払いをしない場合は、裁判所へ提訴する方法もあります。
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